肝臓病の多面的な対策:肝硬変から肝がんまで

肝硬変とその合併症

肝硬変の発症過程

肝硬変は肝炎の長期化により発生します。肝細胞の破壊と再生が繰り返され、肝臓の組織が線維化し硬くなる現象が進行します。この過程では、正常な肝細胞が減少し、肝機能が低下していきます。

肝硬変の影響

  • アルブミンの低下:肝臓で生成されるアルブミンの減少により、体液の浸透圧バランスが乱れます。
  • 血小板数の減少:肝硬変により血小板の生産が減少し、出血傾向が高まります。

肝硬変の症状

肝硬変の症状は病状の進行度により異なります。

  • 代償性肝硬変:肝機能低下が軽度で、症状は比較的軽微です。
  • 非代償性肝硬変:肝臓の機能が顕著に低下し、重篤な症状が現れます。
    • 足のむくみや腹水の蓄積
    • 肝性脳症による意識障害
    • 黄疸の発生

非代償性肝硬変に伴う合併症

肝硬変が進行すると、食道や胃の静脈瘤が形成されるリスクが高まり、破裂すると大量出血を引き起こします。

肝がん:肝硬変の進行に伴う重大な合併症

肝がんの発生背景

肝がんは多くの場合、慢性肝炎や肝硬変の背景下で発生します。肝臓の組織が線維化し、正常な機能を喪失した状態でがん細胞が成長しやすくなります。

肝がんの症状

肝がんの初期症状は顕著ではないことが多いですが、進行すると肝硬変と同様の症状が現れます。さらに進行すると腹部の膨満感、腹痛、出血などの症状が現れ、骨への転移による痛みも発生します。

肝がんの種類

  • 肝細胞がん:肝がんの大部分を占め、主に慢性肝炎や肝硬変から進行します。
  • 肝内胆管がん:比較的まれながんで、肝臓内の胆管細胞から発生します。
  • その他:混合型肝がん、胆管嚢胞腺がん、肝芽腫など。

肝がんの治療法

  • 外科的切除:がん組織の外科的摘出
  • ラジオ波焼灼療法:高周波を利用したがん組織の焼灼
  • 肝動脈塞栓術:がん細胞への血液供給を遮断
  • 分子標的薬:特定の分子を標的とした薬物治療
  • 放射線照射:がん組織への放射線による治療

その他の肝臓関連の病気

体質性黄疸

体質性黄疸は血中のビリルビン値が上昇するものの、多くの場合、重篤な疾患ではありません。しかし、体質性でない黄疸が発生した場合、より重篤な病気が原因である可能性があります。このため、体質性黄疸の診断には注意が必要です。

自己免疫性肝炎

自己免疫性肝炎は、免疫システムの異常によって自身の肝細胞を攻撃し、肝炎を引き起こす病気です。中年以降の女性に多く見られ、免疫抑制剤であるステロイドによる治療が一般的です。全国で推定2万人が患っているとされ、比較的まれな病気ですが、診断が確定した場合は、専門医による治療が必要です。

原発性胆汁性胆管炎

原発性胆汁性胆管炎は、胆汁の流れが悪くなることで肝細胞が破壊され、肝臓の組織が線維化する病気です。中年以降の女性に多く見られ、原因は未だ明確ではありませんが、免疫系の異常が関与している可能性があります。全国で推定5万人が患っており、比較的まれな病気ですが、診断が確定した場合は、専門医による治療が必要です。

まとめ

肝硬変、肝がん、およびその他の肝臓病は多岐にわたる原因から発生し、早期発見と適切な治療、生活習慣の改善が重要です。これらの病気は進行すると重篤な合併症を引き起こす可能性があるため、定期的な検査と自己管理が必要です。